金銀錯嵌珠龍文鉄鏡





金銀錯嵌珠龍文鉄鏡   1-3世紀  日田市 ダンワラ古墳出土
きんぎんさくがんしゅりゅうもんてっきょう

直径21.1cm 厚さ2.5mm,  国指定重要文化財

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡は鉄製で、金銀を使った象嵌が施され、宝石やガラス玉で装飾されています。

装飾された数種類の宝石の中にトルコ石があることから、相当な富と権力を持った人物が作らせたものと思われます。古代においてのトルコ石は大変希少・高価で、現在でいうと、ダイヤよりも高価なアレキサンドライトといったところでしょうか。また驚くべきことに、小さいながらもふさわしいカボションカットに研磨されています。

トルコ石は肉眼での確認も容易ですが、他の石玉についてはまだ調査されていないため、詳細はわかりません。

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡は1964年から東京国立博物館に、またここ数年は九州国立博物館で保管されています。近年樹脂で加工されたせいか、劣化が著しく見えるのは大変残念なことです。





金銀錯嵌珠龍文鉄鏡 文様





竜と虎のデザイン

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡には数種類の動物が描かれており、メインの図柄は雌雄の竜になっています。

この竜は中国発祥の私達が見慣れている竜に、一見似ています。しかしよく見ると、頭の大きさに対して胴体は不自然に細く描かれています。

また虎のような獅子のような、耳が立ってネコ科に見える動物についても、爪を出して力強くふんばるべき足先がありません。ネコ科の動物の武器といえば爪と牙ですが、耳とウロコに比べると、どちらも驚くほどぞんざいに描かれています。


この鏡は中国・朝鮮半島で作られたとか、中国・朝鮮半島から来た職人によって作られたという記述・見解があり、大変驚いています。

竜をつくった国・中国で、美しい竜を知らない熟練細工師がいるでしょうか。またアムール虎がいた朝鮮半島で、足先の無い虎を描く金銀細工師がいたでしょうか。

これだけの金銀と最高の宝石を使って、細密で絢爛な象嵌細工ができる職人は、そのクニ最高の熟練した金銀細工師に違いありません。動物以外のデザインは優雅さと迫力を併せ持ち、完璧な作品とも言えるものです。

なぜ、大陸の動物だけが奇異なのでしょうか。

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡は、虎も獅子も大型山猫もいない日本で、竜文化が入ってくる前の時代に、動物の図柄は乏しい風聞だけを頼りに、女王のためにと大変な苦心をして作られたものと推察します。




卑弥呼の鏡?金銀錯嵌珠龍紋鉄鏡




金銀錯嵌珠龍文鉄鏡は卑弥呼の鏡?

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡は、その豪華さと象嵌された文言、また呪術を意味する文様から、卑弥呼が宗教者として使った鏡ではないかと言われています。

また厚さが2.5ミリと、ごく薄いことから、呪術や占い用に作った魔鏡である可能性が高いと思われます。魔鏡とは、壁に光を反射させた時に模様が浮かび上がるよう作られた鏡のことです。

1−3世紀の呪術を使う女王のものと思われますから、自分は神だと言っていた日田の女王、ヒサツヒメのものであった可能性はかなり高いでしょう。いずれにせよ、卑弥呼クラスの富と権力を持つ女性宗教者のものであったことは間違いありません。



金銀錯嵌珠龍文鉄鏡 デジタル復元



金銀錯嵌珠龍文鉄鏡の復元画像について

金銀錯嵌珠龍文鉄鏡に施された装飾は、その2/3が失われた状態で発見されました。残る1/3の図柄を元にデジタル復元を始めてから、もう3年が経ちます。

最終段階は近いと思ってはいますが、図柄が左右対称ではないことに加えて欠落部分の類推が難しいことから、まだ完成はしていません。現在掲載している画像は、まだ途中段階のものです。

古代の呪術師の女王のすばらしい鏡ですから、考古学を学んだ者として最大限の慎重を心がけたいと思います。








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